給料前払いサービスを比較して考察する
こんにちは。
少し前の記事ですが、給料前払いのサービスが注目を浴びているようです。
“3ステップで給料を前払い”、ミレニアル世代に向けた「Payme」が本日ローンチ
上記記事にもあるように、最近は「enigma pay」や質屋アプリ「CASH」のサービスを再開したBANKが展開するはずだった「PayDay」も注目を浴びています。(「PayDay」は現在ティザーサイトも閲覧できなくなっているので、活動がSTOPしている模様。)
この「給料前借りサービス」は、”給料は基本的に決められた日に支払われるもの”という既存概念を打ち破ることで、従業員は給料日を待つことなく希望するタイミングでお金を手に入れることが可能となります。
また、このサービスを採用する企業にとっても、給料を前払いすることもできるよ!という点を求職者にアピールすることで、求人応募数を増加することができ、結果的に採用にかかるコストを抑えることができる、というメリットを享受できるようです。
「給料前払い」のサービスと聞くと、私は「新しいサービスだ!面白い!」と思ったのですが、いろいろ調べてみるとすでに強豪がひしめく業界のようです。
また、なんだかぱっと見は、WinWinのサービスのように見えるのですが、いろいろ調べていくと突っ込みどころがありそうなサービスということがわかってきました。
ということで、最近評判になっっている「Payme」や「enigma pay」などの新しい勢力と既存サービスの比較をすることで、このサービス自体を評価してみました。
Pay me
Payme
まずは、冒頭で取り上げたPaymeから。
若干24歳のCEOが立ち上げたサービスということで、冒頭で紹介した記事によると「ミレニアム世代によるミレニアム世代のためサービス」とのこと。スマホで簡単に申請ができるということが売りのサービスのようです。
企業側からの観点、従業員側からの観点でメリデメを整理してみると、以下のような感じ。
見て分かる通り、企業側の負担が全くないように見えます。その代わりに従業員側は3%〜6%の手数料が必要になるとのこと。
もし10万円を前払いで受け取ろうと思ったら、3,000円〜6,000円も手数料がかかるようです。
これ、かなりお高いと思うのは私だけですかね?というか、従業員に全然優しくないサービスのようにみえます。
■企業
◎導入初期費用0円
◎準備資金0円
◎運用費用0円
■従業員
◎スマホに最適化されたUIでスマホから申請可能。
◎申請から最短当日に受け取り可能。
×手数料は3〜6%を予定していて、企業の信用度によって変動するという。
なお、「準備資金0円」との記載があるように、前払い分の給与の支払いは、Paymeから行う模様。
これ、「賃金の直接払いの原則」から考えると、かなりグレーなスキーム担っているようです。
フィンテックと持てはやされる給与前払いサービスがこんがりグレーに香ばしい件
全体的なイメージとして、このサービスは従業員に対してではなく、企業側に対して目が向いているように思えます。
まあ、このサービスの直接的なお客さんは導入企業なので、わからないではないのですが、「ミレニアム世代のためのサービス」と謳っているのであれば、もう少しエンドユーザー目線でもサービスを考えてほしい、といのが感想です。
enigma pay
enigma pay
続いて、2017/1/15にリリースされた新しいサービス。
こちらもスマホ用アプリもリリースしているようで、スマホユーザーにとってより利用しやすいサービスとなっているようです。
特徴を以下にまとめていますが、Paymeと似たような特徴となっており、同様に企業側を見たサービスだなあという印象です。
■企業
◎導入初期費用0円(今なら)
?準備資金 : 不明
◎運用費用0円
■従業員
◎事前申請不要
◎スマホやPCから申請可能。
◎申請から最短当日に受け取り可能。
×申請額の6%、プラス100円を給与から受け取る。
準備資金の有無は明確に定義されているところを見つけられなかったのですが、こちらもPayme同様にサービス事業者側から従業員へ支払を行うようですので、法的なリスクがありそうです。
以下の記事にあるように、サービス理念とやっていることのズレに違和感を感じてしまいます。。。(現在は、”貧困の格差を軽減するため”という表現は削除されているようでした。)
人手不足解消のため「給与前払い」システムに注目集まる でも従業員から手数料ってどうなの?
フレックスチャージ (三菱東京UFJ銀行)
フレックスチャージ (三菱東京UFJ銀行)
メガバンクである三菱東洋UFJが展開しているサービス。
全く聞き覚えがないサービスですが、企業向けのサービスだからなんですかね。
以下に特徴をまとめましたが、企業側は運用費用などは必要なようで、支払いのための準備資金も必要です。
企業にとって導入のハードルは高いですが、直接給料も支払っているようですので法的な問題は回避できているようです。
従業員側も振込手数料は必要なようですが、3万円以上であれば一定の料金なので、Paymeやenigmapayよりは従業員の負担は少なくて済みそうです。
■企業
?初期費用 不明
×準備資金 必要
×運用費用 有料(金額不明)
■従業員
◎スマホやPCから申請可能。
◎申請から最短翌営業日に前借りできる
×月額利用料がかかる(毎月172円)
×振込の度に540円(3万円以上は756円)の振込手数料がかかる。
※振込口座が三菱東京UFJ銀行の場合は、173円(3万円以上は389円)。
※参考サイト 日総工産の給料前借り制度「フレックスチャージ」の特徴と注意点
メガバンクのUFJ銀行が展開しているサービスということで、安心感はありますね。”フレックスチャージ”で検索してみると、採用している企業も結構多いように見受けられます。
キュリカ
キュリカ
沢尻エリカさんがCMしているとは!!私は見たことがないですが。。。
企業向けのサービスなのに、CMを打ってるってことは、従業員側からの知名度アップを狙ってるんでしょうか?
上記のサイトでも明確に謳われていますが、従業員側の負担が少ないことが、このサービスのポイントのようです。
確かにこのページで記載した他社と比較して、従業員側の手数料はもっとも安いですね。
■企業
◎導入初期費用0円
×準備資金 必要
×運用費用 必要
■従業員
◎スマホやPCから申請可能。
◎申請から最短当日に受け取り可能。
×ATM利用手数料として432円 ※確認できたのは、セブン銀行とイオン銀行だけですが、他銀行でもこれ以上安いことはなさそう。
比較結果からの所感
既存の「給料前払いサービス」は、上記の2サービス以外にもかなりの数が存在しています。
最近注目を浴びているサービスとの大きな違いは、導入企業側の負担が重いか軽いか、という点のようです。
革命的なビジネスモデルが出てきた、ってことでは全くないようですね。
個人的には、このビジネスモデルは、従業員側に費用を負担させないようにすべきではないか、と考えます。
企業側の負担だけで完結させることってやろうと思えばできるはず。(振込手数料は振込回数に依存して増加するので、月1回までの前払いまでは無料で以降は有料にする、などの制限は必要ですが。)
そもそも、立ち止まって考えみたら、最長でも20日程度の給料の前借りで数百円を支払っていたら、普通に金利18%でキャッシングする方が手数料安いんですよ。。。少し試算してみても、以下のように圧倒的ですよ。
<3万円を年利18%でキャッシングして20日後に返済>
3万円×20日/365日×0.18=295円
<3万円を手数料3%で前借り>
3万円×0.03=900円
まあ、キャッシングは借金なので、信用情報に登録されるというデメリットもありますが。
というか、次の給料日までに支払が必要なんだったら、クレジットカードで1回払いで支払えばいいのでは?
手数料0円で前借りしているようなものだと思います。
結論
ということで、最近流行ってるからとか、アプリが利用しやすいから、というような安易な理由で前払いを選択しないほうがいいと思います。
それって、サービス事業者側の目論見通りに多大な手数料を支払わせるだけですよ。
「給料前払い」以外にも現金を手にする方法はいくらでもあると思うので、いろんな方法を十分に検討して方法を決めるようにしましょう。
最後にこのビジネスモデル。
少なくとも既存サービスはアルバイト派遣企業などが多く採用しているようなんですが、正社員の割合が多い企業は、このサービスを導入するメリットってあるんですかね?
私が正社員として働いていた時に、今月の給料までお金がなくて困るなんてことはなかったし、そもそもそんな人にも会ったことはなかったです。(まあ、そんなこと他人には言わないでしょうが。)
てなると、このビジネスモデル自体が、お金がない人を狙ったサービスのようにしか見えないので、やはり利用者に負担をかけない(負担が少ない)ようにサービスをアップデートしていってほしいですね。